TikTokで動画投稿を続けていると、「うちのエージェンシー(MCN)に所属しませんか?」「ホテルや飲食店のPR案件をご紹介します」といった公式通知やDMが届くことが増えてきますよね。
実は先日、私のところにもとあるTikTok公式パートナー企業から、エージェンシー契約のオファーが届きました。海外を拠点とする企業であり、その日本法人からのオファーでした。
当然私としても初の経験なので、「ここはどんな事務所なのか?」と、WEB上の公開情報だけを頼りに調べてみただけでもいろいろと気になる点が出てきました。
この記事は、特定の企業を批判することが目的ではありません。クリエイターの皆さんが、甘い言葉のオファーを受けた際に「自分でどのようにファクトチェックを行い、相手のサポート体制の本気度を見極めるべきか」という、実践的な防衛策を共有したいと思います。
1. ファクトチェック①:まずは公式サイトを「プロの目」で疑ってみる
オファーが来たら、真っ先に見に行くのが公式サイトです。しかし、「綺麗に作られているから」「数字がすごいから」と鵜呑みにしてはいけません。細部を確認してみましょう。
私が今回オファーしてきた企業のサイトを確認して、真っ先に違和感を覚えたのは以下の点です。
- 所属クリエイターの実態がない
「所属インフルエンサー」として紹介されているアカウントを実際にTikTokで検索してみたところ、アカウントが存在していなかったり、記載されているフォロワー数に全く達していなかったりしました。さらに「◯◯系インフルエンサー」と紹介されているのに、実際の投稿内容は全く無関係なジャンルというケースもありました。 - サイトに「ダミーテキスト」が放置されている
実績をアピールする箇所に「0年+Y+ 業界経験」「0カ国 グローバル拠点」といった、WEBサイト制作時のテスト用テキスト(プレースホルダー)がそのまま公開・放置されていました。
【ここから分かること】 海外の企業が日本に進出してきたばかりだからかもしれませんが、仮のデータを使ってサイトのデザインを整えている段階なのかなとは思いました。ただ、クリエイターにオファーを出しているということは少なくともそのクリエイターがサイトを見る確率は高いわけで、その段階にも関わらず仮のデータを利用していたり、サイトの管理もきちんとできていなかったりというのが見えた時点で信用するのが難しいですよね。
2. ファクトチェック②:通知の「一言」から裏側の組織構造を見抜く
次に注目すべきは、送られてきた通知やDMの「文面」です。今回は、TikTokのシステム通知の中にオファーを出してきた企業とは別の会社名が記載されていました。
この会社名をGoogleで検索してみると、以下のような事業を行っている企業であることが分かりました。
- 海外企業の日本市場参入支援
- 事務代行
【ここから推測できる裏側の実態】 つまり、今回オファーを出してきた海外企業は日本進出にあたり、自社でゼロから組織を作ったのではなく、この日本の代行会社に「日本法人の立ち上げ」「仮のWebサイト作成」「クリエイターへのスカウト(DM送信)」を丸投げしているフェーズであると推測できます。
「契約後は手厚くサポートします」と言われても、今DMを送ってきているのはTikTokのプロではなく、代行会社の事務スタッフである可能性が極めて高いです。サポートをしてくれる専任マネージャーは、現在進行形で採用中か、まだ不在の可能性すらあります。
当然今後TikTokに詳しいマネージャーの採用が進み、手厚いサポートが実際に提供される可能性はありますが、少なくとも現段階で所属してもあまりサポートは期待できそうにないな、というのが現時点での印象でした。
3. ファクトチェック③:海外の本社や実態を多角的に調べる
今回の場合は少なくともTikTokの公式パートナーになっている企業からなので、日本はともかく海外では実績があるのだろうと思い、英語や現地語を使って、その企業の本国や海外での活動実態を調べてみました。
少し前までは自力で調べて、わからない部分は翻訳して…といった手間と時間がかかっていましたが、今ではAIを使って調べられるのでめちゃくちゃ楽になりましたよね。当然AIで調べても間違いはありますが、英語以外の言語サイトも幅広くリサーチできるため、より多くの情報を取得する上で非常に助かります。
ちなみに、その企業は海外でライブストリーマーや動画編集者、インフルエンサーマネージャーなどの求人を大量に出しており、TikTokの公式パートナーとして現地でしっかり活動している実体のある企業であることは確認できました。
口コミのような実際にその企業に所属しているクリエイターの声みたいなのは見つけられなかったようですが、これはAIに対する検索の指示が雑だったので見つからなかっただけかもしれません。
【総合的な結論】 今回オファーしてきた企業については、外資系企業が日本に進出する際によくある「超・見切り発車」の状態であることが推定されます。とりあえず日本のドメインを取り、代行会社を使ってクリエイターをかき集め、同時並行で体制を整えようとしている段階にあると結論付けられます。
まとめ:クリエイターが身を守るための契約の鉄則
海外での実績や資金力があるため、これから日本で急成長する可能性はゼロではありません。もし彼らが本気なら、初期メンバーとして優遇される「先行者利益」を得られるチャンスもあるでしょう。
しかし、「案件が全く振られず放置される」というリスクも非常に高い状態です。もしこのような立ち上げフェーズのエージェンシーと面談や契約をする場合は、以下の条件を絶対に譲らないでください。
- 独占契約(専属)は結ばない(他社の案件も自由に受けられる状態にする)
- 「いつでも違約金なしで契約解除できる」条項を必ず入れる
- 登録料やマネジメント料など、こちらが負担する費用が一切ないことを確認する
スカウトのDMが届くこと自体は、あなたのアカウントが評価されている証拠であり、素晴らしいことです。しかし、自分の大切なアカウントとブランドを守れるのは自分だけです。
契約書にサインをする前に、提示された数字や言葉の「裏側」を冷静に調べ、納得のいく形で次のステップに進んでいきましょう!
おわりに:私自身が出した結論は「今回は見送り」
ここまでいろいろと検証してきましたが、「で、結局あなたはどうするの?」と思われた方もいるかもしれません。結論から言うと、私は今回のオファーを辞退することにしました。
もし私にたっぷりと時間があり、インフルエンサーとして本気で稼ぎたいと考えていたなら、ある意味「日本法人の立ち上げメンバー」として関われる面白さに惹かれて、チャレンジしていたかもしれません。
しかし、現状の私にとってTikTokはあくまで「時間が作れる範囲で楽しむもの」という位置づけです。自分のペースを崩してまで取り組むものではない、というのが一番の理由です。(まあ、立ち上げ段階の事務所なので、そもそもバンバン案件が来てペースが崩れる……なんて心配は杞憂かもしれませんが笑)
ただ、見方を変えれば、決して悪い話ばかりではありません。本国ではしっかりと実績を出している企業ですし、日本の代行業者に安くないコストを払って進出準備をしているということは、「日本市場で本気でビジネスを展開する意志(と資金力)はある」という裏返しでもあります。
そう考えると、今のうちに所属して事務所との関係値を深めておけば、将来的に日本のメインクリエイターへ駆け上がるチャンスは十分に秘めていると言えます。「ライブ配信でガンガン稼ぎたい!」「TikTok中心の生活にしたい!」という熱意と時間がある方にとっては、飛び込んでみる価値のある環境かもしれませんね。
ただし、どんな場合でも、自分の身は自分で守ることが大前提です。もし面談に進む場合は、先ほど紹介した「自分を守るための交渉」を必ず行った上で、慎重に判断してくださいね!

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