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分業制によってゴールが増えたら意味がない

今日はたまたま本部と現場の連携がうまくいっていない or うまくいっていないであろうと思われる記事を読みました。

参考記事:ひとつの本屋で起きたこと。

参考記事:ローソンのコーヒーは、なぜ「手渡し」なのか

上のブログについては元アルバイトの方視点の話だけなので本部側にも言い分はあるかもしれませんが、1つのモデルケースとして十分にありえる話だと思います。

下のブログについては取材記事になるので本部側は実名入りでのインタビュー、現場側は匿名の誰かなので現場側の情報は偏りがある可能性はあります。

この事例に限っての話ではなく、自分の経験からしてもこのような現場と非現場(経営層や本部など)間に現状認識に関する乖離が出てしまう場面に出会ったことがあり、なんとかならないものかとよく思ったものです。

分業制のデメリット

先日、サラリーマンは会社の分業制によって自分の役割が明確になり、それに集中すれば良いという点で恵まれているという話を書きました。

努力し続ける人たちとの戦いに勝ち抜けるのか

分業制によって雑多な業務を他部署が処理してくれるため、フリーランスのように何もかもすべて自分でやるよりも余裕ができ、いろいろなことにチャレンジするチャンスが生まれる点は本当にメリットだと思います。実際、自分がサラリーマンをやっていたころを振り返ってみても朝から晩まで自分がやるべきことだけに集中できるのでかなり余裕を持って働けていましたし、勤務時間外は自分がやりたことをやる生活ができていました。

ただ、前回の記事では書きませんでしたが、当然分業制によるデメリットもあります。分業制によってそれぞれの役割が明確になるのはいいことなのですが、役割分担の分担範囲が明確になって以内ケースが多々見られます。それにより、それぞれの部署/担当者が自分の役割を果たそうとすると衝突してしまう場面が出てくるのです。

例えばですが、ある商品を販売しようとした時に商品開発部署、営業部署、マーケティング部署などがその商品に関して自分たちの意思を持って個別に行動してしまうといったケースです。本来は商品の開発から販売までの流れに対して共通の意図を持った上で各部署/担当者がそれぞれの持つ知恵やノウハウを提供することで売上を伸ばしていく必要があります。

ところが、共通の意図が明確になっておらず、各部署/担当者がそれぞれ個別に考え、行動してしまっているケースが少なくないのです。共通の意図が明確になっていれば開発の段階から最終的なゴールに向けた仕組み作りを考え、それを実現するために営業担当者が販売し、それをマーケティング部署が支援するといった流れができるのだと思いますが、それができていないのですね。

開発部署は「こういうものが作りたい」、営業部署は「この顧客層に販売して売上作ろう」、マーケティング部署は「こういう売り方やPRで販売につなげよう」といった形でそれぞれ戦略を作ってしまうため、結果として「こういうことができるからAをやっている会社で使える製品を作ったのにAをやっている会社に売りに行かないのは営業が悪い」「Bをやっている会社がお金持っているから売りに行きたいのにB向けの機能がついていないのは開発が悪い」「インターネット経由での販売が向いている商品なのに営業は毎日数件だけ営業して終わってるなんて効率悪い」などなどうまくいかないケースが出てくるのです。

本来ならば、上記の通り部署横断で意思疎通を図り、それぞれの持つ知恵やノウハウを共有しながら動けばよいのですが、分業制によってそれぞれの部署にも役割や目標が設定されている事が多く、それら役割や目標を達成することに目が向いてしまい、自分たちのやり方/考え方だけで動いてしまうことがあるのです。

それぞれのミッションを達成するためには誰かが我慢しなければならない

多分にもれず、私が働いていた会社でも部署間での情報共有や打ち合わせが希薄になってしまい、それぞれの部署が独自に動いたことで無駄な作業が発生してしまったり、感情的な対立が発生してしまったりという問題が起きました。

私個人から見れば、経営層が思いつきで各部署に個別に指示を出したことが悪いと思っているのですが、サラリーマンたるものおとなしく従わないといけないことも多いので多少なりとも良くなるように努力をするしかその時は対応策がありませんでした。

ひとつの本屋で起きたこと。」のブログで書かれていたことに少し近いかな、と思うのが現場は現場で顧客が何を求めているかの情報を集めた上で商品の用意なり営業なりを進めているのに「インターネットで販売しても結構売れるらしい」と考えた経営層が別部署に「インターネット販売ができる体制を構築しろ」といった指示を出したことでそちらの部署から商品に関して口出しをされるようになった点です。

上記のブログでは本部側がオシャレな店舗を作ることで客を呼び込もうと考えたのに対して、現場側は長年の実務経験から売れる本を適切なタイミングで提供することで客を呼び込もうとした点ですれ違いがおきていますよね。私の場合はターゲットを変えるという話ではなかったので少し事情は異なりますが、インターネット販売をすることを考慮した上で見栄えを良くしなければならないといった追加の作業が増えました。見栄えももちろん商品を良くする上で重要な要素になることはわかっていますが、もともと大量に販売するような商品ではなく、使い勝手の良さなどが最も重要な購入動機になるものであったのでサイト上で見栄えが良くなったところで購入客が増えるわけでもなかったのでかなり現場としては反発が強かったのを覚えています。

私がいた現場側の部署も素直にハイハイ言う人間ばかりではなかったので、客先に行って「こういう形にしたら買います?」とインターネット販売を推進する部署から言われた内容(見栄えをよくしろ、など)をぶつけてみては「そこはあまり重要視していない」という顧客の声を集めまくって「その指示には従いたくない」と反抗していました。とはいえ、その部署も経営層からの指示で実行しなければならないのでこちらが何を言ったところで関係なく動かざるを得ないんですね。そりゃ、経営層からは実現することを前提として「進捗はどうなってる?」と定期的に聞かれるわけで、まったく進んでいないなんてことにはできませんから。

結局その時はこちら側が折れる形で作業負担増加を受け入れることにしましたが、このようなケースは多いのではないでしょうか。「ローソンのコーヒーは、なぜ「手渡し」なのか」で書かれているように、経営層側(本部側)はコンビニを街のカフェとして位置づけ、「”みんなと暮らすマチ”を幸せに」という企業理念を実現することを現場側に作業として指示し、現場側はそれを受け入れざるを得ないといった形ですね。実際、この記事は話題となってTwitterなどでもこの記事に関してのツイートを見かけますが、レジが混雑している時は注文しにくいとかレジ待ちしている時に前の人がコーヒー頼むとイライラするといった声なんかが目立っており、「そもそもコンビニで会話なんて求めていない」なんて声も見かけます。

現場側からしても手渡ししなければならないという新たな作業負担を背負った中でコーヒーを頼んだお客さんと仲良く話をするなんてことは無理ですよね。特にレジが混雑している中でコーヒーを作って、手渡す時に新商品の案内など始めたらレジ待ちしている人たちの怒りを一身に受けなければならなくなります。結果、コーヒーを急いで作って、さっさと手渡して、次の人に謝って…といった形になるのが関の山だと思います。

これにしても、分業制(コンビニの場合はフランチャイズ制ですが)によってそれぞれにミッションが与えられ、それを実現するために誰かしらが我慢しなければならない典型的な事例だと思います。

ゴールは1つでそこに至る道のりは複数あっても良い

会社のゴールは「利益を上げる」しかないと個人的には思っていますが、それを具体化したゴールが幾つかあるのは仕方ないかな、とも思います。

ただ、どちらにしてもそのゴールについても優先順位をつけた上で、最も重要なゴールが何なのかは明確にした方が良いと考えています。複数のゴールを実現するために衝突してしまうシーンが発生した場合にどちらを優先するのかという順位付けができていないと判断できませんからね。そして、そのゴールに向けて一丸となって進んでいくという意思の共有がなされていないと分業制のメリットは出てこないと思います。

なお、ゴールに向かって進んでいく方法はいろいろなものが考えられるでしょう。先程例として挙げたように、販売の方法をこれまでの直接顧客とあって販売するものだけではなくてインターネット経由で注文を受注するというのもそうでしょう。大学の書店に客を呼び込むのに専門書だけでは販売時期が限られてしまうので、オシャレな店舗にすることで立ち寄ってもらう機会を増やそうとするのもそうです。コンビニをただの買い物の場としてだけでなく、コミュニケーションを取ることで街に溶け込み「地元の店舗」という意識を持ってもらうというのも1つの手段だと思います。

それら幾つもの手段を経由してゴールにたどり着ければ良いわけで、両立するのであれば複数手段を同時並行で取り組むのはありです。それこそ、自分たちにない知恵やノウハウを生かしてくれることでゴールに辿り着きやすくなるとわかれば進んで協力する人も増えることでしょう。残念なのは、先に紹介した2記事ともにゴールが別のところに置かれていると思われるところです。書店の例では「売上を増やす」というゴールは一緒だと思いますが、それぞれ想定しているお客が違っているため「売上を増やす」の前につく「◯◯に売って売上を増やす」の◯◯部分が異なるゴールを設定している気がします。ローソンの例にしても同様だと思います。〇〇の部分がゴールの話ではなくて手段の話、道のりの話と見ることもできますが、◯◯部分が絶対化しているであろうことが想像できるのでゴール化していると言って良さそうです。

私見ではありますが、ゴールは比較的大きなもの(「売上を増やす」)にして、その手段やターゲットについては明確化した上で現実的な取り組みに落として行く必要があると思います。先程も書いた通り、手段やターゲットが複数になるケースも多いでしょうし、そういう設定となることは問題ないと思います。その上で実現可能性について関連する部署や担当者が調整をした上で実行していけばいいのではないでしょうかね。そして、その状況を俯瞰的に見て、連携すべきことや調整すべきこと、やらないと判断することを見つけ出して指示するのが経営層であったり、本部であったりするのではないかと思います。

その能力が高い人が名経営者と呼ばれる人たちなのでしょう。